この事例の依頼主
年齢・性別 非公開
相談前の状況
依頼者は、過重労働により精神を病み、労災認定を受けていました。休職前の残業時間は月100時間をゆうに超過していましたが、会社側は依頼者を管理職とみなし、時間外割増手当を支給していませんでした。
解決への流れ
会社側に労災に基づく損害賠償請求に加え未払残業代請求を行うことにしました。未払残業代請求は過去3年分しかできないという制限がある関係で先行して交渉を開始しましたが、会社側は依頼者を管理監督者とみなして労働時間に関する資料開示請求に応じませんでした。そこで、未払残業代請求についてのみ訴訟を提起しました。さすがに裁判となると会社側は一部資料を開示してきましたが、管理監督者性については譲らず、裁判所の勧奨もあり和解での解決する見込みとなりました。
本件のように労災被害による損害賠償を請求できるケースであっても、未払残業代がある場合は過去3年分という期間制限があるため、できるだけ早めに請求することが大事です。また、時間外労働の事実があっても、当事者が管理監督者と認められると深夜を除く時間外割増賃金の請求ができなくなってしまいます。管理監督者がどうかは、「店長」「課長」などの役職名よりも、管理監督者としての実態があるかどうかが重要な判断基準となります。たとえば、勤務時間について自分で決められない、経営会議などに出席できず経営に全くタッチしていない、といった事情がある場合、一見管理職らしい役職についていても一般の労働者と同様の働き方をしていると考えられるので、管理監督者とは認められず、未払残業代を請求できる可能性が高いといえます。